事業概況
2023年11月期 第3四半期(以下、当期)は、新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に移行したことに伴い、経済活動は回復し、食品業界では業務用需要が戻り基調となる一方、春以降、多くの食品で値上げが続き消費には陰りもみられました。そのような事業環境のもと、国内事業は、乳原料の一部製品や輸入豚肉の販売において、業務用を中心に順調に推移しました。しかしながら、乳原料・チーズ部門において、円安と国産脱脂粉乳の過剰在庫対策により、輸入原料から国産原料への置き換えが進んだため、当社の輸入販売は伸び悩みました。新規事業である機能性食品事業は、プロテイン原料を中心に提案型営業活動を積極的に展開し、販売は順調に進んでいます。
アジア市場においては、東南アジア各国で観光業が活性化したことから業務用需要が回復したものの、景気後退懸念が高まる中国の需要低迷が各国の食品業界需要に影響を及ぼしました。当社のアジア事業もその影響を受け、チーズ製造販売部門ではプロセスチーズの販売が伸び悩みました。乳原料販売部門は、日本において乳製品原料が輸入品から国産原料へと置き換えが進んだため、日本向けの調製品原料販売が減少しました。
以上の結果、当期の売上高は117億33百万円(前年同期比9.2%増)、経常利益は20億59百万円(前年同期比24.4%減)と増収減益となりました。なお、当期の経常利益にはマイナス方向の為替の影響が90百万円含まれており、その影響を補正すると調整後の経常利益は21億49百万円です。
増収の主な要因は、昨年の相場高・円安の影響を受けた商品単価の上昇によるものです。また、減益の主な要因は、国内事業で販売数量が伸び悩んだことや、アジアのチーズ製造販売部門において、原材料価格の上昇などによる利益率低下です。
連結経営成績(累計)
2022.11期3Q | 2023.11期3Q | 増減率 | |
---|---|---|---|
売上高 | 107,485百万円 | 117,330百万円 | 9.2% |
経常利益 | 2,725百万円 | 2,059百万円 | △24.4% |
経常利益に含まれる 為替影響額 |
70百万円 | △90百万円 | - |
為替影響額調整後の 経常利益 |
2,654百万円 | 2,149百万円 |
△19.0% |
親会社株主に帰属する 四半期純利益 |
1,970百万円 | 1,434百万円 | △27.2% |
【参考情報】
棚卸資産の増加に関する補足説明
前期末より棚卸資産が増加した主な理由は下記のとおりです。
- 国内チーズ市場で最終商品の値上げにより需要が低調となったため、当社の原料販売の進捗が鈍化しました。
- 食肉食材事業においては、受注増に伴い棚卸資産が増加しております。
なお、いずれの部門においても当社の棚卸資産は原則、販売に紐づいており、自社で在庫を抱えるリスクは負っておりません。

2023年11月期 第3四半期(2023年6月~2023年8月)
当第3四半期会計期間の乳原料・チーズ部門において、売上高は263億67百万円(前年同四半期「以下、前年同期」比4.8%増)、販売数量は39,464トン(前年同期比11.6%減)となりました。
国内の需給動向
- 外食・レジャー産業が活況となり業務用の食品需要は回復傾向。なかでもチョコレートや土産用菓子の需要が増加。
- 各種対策事業の効果により、国産脱脂粉乳の在庫水準は低下。2023年3月以降6万トン台で推移。
- 4月の加工用乳価の値上げに続き、8月には飲用乳価の値上げが実施され、国産乳製品の価格が上昇し消費が鈍化。
- 乳製品消費は弱含んだものの、猛暑による生乳生産量の減少により国産脱脂粉乳の在庫調整は継続。
当社の状況
- チョコレートの原料となる乳糖や全粉乳などの販売が堅調。
- 国産脱脂粉乳の過剰在庫対策のひとつでもある輸入原料から国産原料への置き換えが進んでいる。これにより、在庫調整が進む一方、当社の輸入原料の販売は減少。
- チーズも外食向けをはじめとした業務用需要が回復するも、値上げ影響で小売需要が冷え込んだことから輸入チーズの販売数量は伸び悩んだ。しかしながら、当社の販売は、グローバルなサプライネットワークを活用した価格競争力のある原料の調達により、販売は底堅い。
- 国産脱脂粉乳の在庫調整が進んだことにより、ここ数年取扱いが増えていた国産原料の販売は、国内向け・輸出向けともに減少。
トピック
- 国産バターは供給が減少する一方、需要は増加しているため、ALIC(独立行政法人 農畜産業振興機構)は、今期の輸入枠の拡大を発表。
- 乳製品の国際相場は軟調。乳製品の最大の輸入国である中国の需要が、経済回復の遅れにより低迷していることが背景。国際相場下落で国内における輸入品の価格競争力は回復。
- 国産脱脂粉乳在庫は減少傾向が続いているが、酪農・乳業界では、乳価値上げの影響による乳製品消費の減少を懸念する声も強く今後の動向は注視が必要。

2023年11月期 第3四半期(2023年6月~2023年8月)
当第3四半期会計期間の食肉食材部門において、売上高は44億16百万円(前年同期比19.2%増)となり、販売数量は6,957トン(前年同期比13.5%増)となりました。
国内の需給動向
- 外食向けなど業務用需要は回復傾向。
- 欧州地域で昨年ASF(アフリカ豚熱)が流行した影響や、生産コスト高による生産量減少を受けて、欧州産ポーク価格が高騰。そのため当社の得意とする北米産ポークの引き合いが増加。
当社の状況
- 当社の主力商品であるチルド・フローズンポークの販売が堅調に推移。欧州産ポークの市場価格が上昇するなか、当社が強みを持つ北米産の引き合いが増加。
- コロナ禍に起因する労働者不足の影響で、米国の主要サプライヤーの生産が減っていたが足元回復中。チルド・フローズンポークの調達は順調。
- 取扱商品の多様化を目指し、鶏肉・鶏肉加工品の販売を本格化。
トピック
- 今期より本格化した鶏肉・鶏肉加工品の販売は第3四半期も順調に推移。

2023年11月期 第3四半期(2023年6月~2023年8月)
当第3四半期会計期間のアジア事業(乳原料販売部門)において、売上高は35億34百万円(前年同期比50.4%減)、販売数量は6,390トン(前年同期比48.3%減)となりました。
東南アジア・中国の需給動向
- アジア地域の乳製品需要は、シンガポールにおいて外食・レジャー産業の復調とともに堅調。
- 中国の景気後退の影響により、アジア各国で生産されている中国向けの食品需要が減少。
- 中国による乳製品輸入が減少していることから、乳製品の国際価格が軟調に推移。
当社の状況
- 日本向け乳調製品の原料販売は減少。日本において輸入品から国産脱脂粉乳への置き換えが進んだことを受けたもの。
- 日本からのアジア向け輸出が減少したことにより、近年取扱いが増加していた日本産脱脂粉乳の販売が減少。
- 現地食品メーカー向けの乳原料販売も、中国景気後退の影響を受け軟調。
トピック
- 中国向け輸出が減少していることから、オセアニア産乳原料の輸出先が中国以外のアジアに向かい、当社との競争は激化している。

2023年11月期 第3四半期(2023年6月~2023年8月)
当第3四半期会計期間のアジア事業(チーズ製造販売部門)において、売上高は12億26百万円(前年同期比15.2%増)、販売数量は1,172トン(前年同期比5.7%減)となりました。
東南アジア・中国の需給動向
- シンガポールを中心に外食やベーカリー向けの需要が底堅く推移。
- 中国は経済回復が遅れ、食品全般で需要が低迷。その影響はアジア全域に及び、シンガポール、マレーシア、タイでは、中国向けの食品を製造する企業の原料チーズ需要は減少。
当社の状況
- 中国向け食品を製造する食品メーカー向けのプロセスチーズ販売が想定より減少。
- 一方、近年引き合いが増えているナチュラルシュレッドチーズの販売は外食向けで順調に増加。
- 昨年の原料チーズ相場の高騰により、プロセスチーズの製造販売部門の利益率が低下。
トピック
- シンガポールの新工場は、2025年上期から稼働をめざし建設準備が進む。
当社は基本的に為替リスクは負わないビジネスモデル
当社の基本的な取引においては、海外仕入先との外貨建て仕入契約締結と同時に、国内顧客と円貨の販売契約を締結しています。その際、仕入外貨額に対する為替予約をすることで為替リスクをヘッジしております。
但し、当社は外貨為替会計処理基準における原則法を採用しており、そのため会計上の表示が特徴的
その特徴は、営業取引の各段階に応じて、会計処理に使用する為替レートが異なるため、営業取引の途中段階において、会計上の為替差損益が生じる点です。
その結果、仕入契約時に為替リスクをヘッジした場合でも、営業取引の途中段階においては、為替差損益が、売上原価と営業外損益に分かれて計上され、営業外損益のみならず、売上総利益及び営業利益についても為替表示の影響を受ける場合があります。
その他、決算期をまたぐ取引の場合は会計上、為替差損益が先行して計上される場合がある
決算期をまたぐ取引(翌期以降に販売)については、仕入決済を行い棚卸資産として計上したものの、売上計上の時期が翌期となり、仕入決済にかかる為替差損益のみが先行して計上され経常利益に反映されます。
なお、下記の図解をご参照ください。
-
(ご参考)図解:為替影響と当社の会計上の表示について (632KB)